くのいちの大事な役割
「3ヶ月以内に少なくとも二人以上経験し、1回はオーガズムを感じること」
先生の口から淡々と放たれた言葉は教室中を唖然とさせた。
みな、くのいちを目指すものなら何となく想像はしていたけどこれほどまでにはっきり言われると、思春期の女子達は刺激が強すぎる。
私達は忍者だ。
パソコンやスマートフォン、自動車、テレビ、電車を使う時代である現在であっても忍者だ。
大体の生徒が戦国時代から続く忍者の家系で、戦国時代から続く武将の家系に仕えてきた。
そしてここは戦国時代から続く忍者の学校。
大昔はそれこそ戦闘技術や兵法をメインに教えられていた様だが、今は語学や歴史、美術、音楽などの教養を高める授業が多い。もちろん、昔の名残で部活動という形で戦闘技術の教育が強く残っている。
「みなの気持ちは良く分かる。よって、これから個別に面談して”最初の相手”をマッチングするつもりだ。もし課題を両方経験済である強者がいればその際、申し出る様に」
先生は出席番号1番の子を呼び退室していった。
磁石の様にそれぞれ仲のいい子と最初の相手はだれか、経験済か、などと話し合った。
「ミツキは伊賀あきら先輩?」
「えっ、あ……」
春菜の何の前触れも無く突然なぶっ込みに自分でも分かりやすいくらい、顔が熱くあった。
「はるちゃんいきなりすぎるよぉ……」
「見てて分かるし。チナリも知ってるじゃん」
「ふぇっ…そうだ、けど……」
「ミツキ、伊賀あきら先輩は見た目通り強くて激しくて長持ちみたいだから最初の相手に十分開発してもらうことね」
春菜は学校内でも有名な位、色々な人と寝ている。
本人いわく、大昔から女が多く生まれがちで女系が強い家系らしい。
そのせいか、戦術というよりも諜報に力を入れていた。分かりやすく言うと女の武器を使い男をたぶらかし情報を入手していたのだ。そのせいか幼い頃から家族、親族全員が性にオープンでそっちの方の技術開発が高められた。
ハニートラップも大得意で現代では政敵を貶めたり、干したい芸能人にたいし、テレビ局が依頼をしてくるなどさまざまである。
「春菜もしかして、伊賀せんぱいと寝たの?」
「いや、他の伊賀家の人とは何人もつまみ食いしたけど、伊賀せんぱいはさすが当主なだけあってガード固いね。彼女としかしないみたい」
「じゃあ、私も無理かな……」
「それはどうかな。私はどっちにも転ぶ可能性はあると思ってる」
「どういう意味?」
「"妹みたい"とか思われてなければね」
「それ一番自身ない……」
「伊賀あきら先輩に乗り込みに行く前に私のところきなよ。艶っぽくしてあげるから」
にひひとイタズラっぽくわらう春菜に嫌な予感しかしないけど、妹みたいに思われていそうなのは事実なのでここは大船に乗りたい、泥舟であっても鷲掴みたいと思った。
「それよりも大事なのは"最初の人"よ。誰とは言えないけど、私の感が正しければ心の準備しておいた方が良いと思うよ」
「え、それってどういうこと……?」
教室の扉が開き私の名前が呼ばれた。
意味深すぎる最後の言葉を残され私は心臓が高鳴りながら先生の待つ部屋へ向かった。
つづく